色、香り、風味に関していえば、真の日本茶は繊細さから力強さまですべての特徴をもっています。しかし、その種類の多さや日本語の商品名の複雑さゆえこれらの違いを知るのは至難のわざです。本日は、みなさまに緑茶の真のお茶通になっていただくために、茶葉の特徴的な色、香り、風味をもつ一般的な緑茶10種類について学んでいただきます。
緑茶の基本
緑茶の基本:色、香り、風味
すべての緑茶の茶葉は、カメリアシネンシス(茶の木)という木から摘まれますが、緑茶の製造過程の違いにより、それぞれの緑茶の特徴である色、香り、風味が生み出されます。
緑茶の色
緑茶の色は、茶葉に含まれる葉緑素の色です。茶葉は、木から摘まれた瞬間から酸化し、色が変わり始め、発酵が始まります。発酵を止めるために、摘採後すぐに蒸され焙煎釜で焙煎されます。それでも、茶葉の選別の過程、また生産過程において葉緑素の発酵を完全に止めることはできません。これが、お茶を淹れたときの色の違いになります。
また、淹れた緑茶の色は、熱や光や空気にさらされたり、茶葉のなかの別の成分と化学反応を起こしたときに酸化したお茶の中の葉緑素とカテキンに大きく関係しています。したがって、しっかり密封された容器に入れ最適な環境で保存することが大切です。
緑茶の香り
緑茶の香りの違いは、300種類以上の成分から生まれ、この香りによってお茶の愛好家は緑茶の質を見分けるといわれています。
例えば、日本で人気の緑茶である煎茶は、茶葉の中の成分であるピラジンに熱を加えたときに出る青葉アルコールの草っぽい香りと焙煎した香りのバランスがうまく取れているものが高級なお茶とされています。
高級緑茶である玉露は、茶葉の摘採前に20日間ほど茶の木に覆いをかける「覆下」と呼ばれる特別な栽培方法を用いるため、まるで海苔を思わせるような香りをもっています。
緑茶の風味
緑茶の風味は、食べ物と同じように基本的な味の特徴、つまり甘み、苦味、渋み(果物やワインのタンニンの口当たり)、うまみで表現されます。お茶の味は、収穫された茶葉にどんな成分がどれだけ本来含まれているかで決まります。
- テアニンのようなアミノ酸による甘み
- カフェインとカテキンによる苦味
- カテキンによる渋み
- グルタミン酸やテアニンのような酸によるうまみ
水と温度の重要性
緑茶の風味は、また水の質やお茶を淹れるお湯の温度にも大きく影響されます。それぞれの緑茶のおいしさをしっかり味わうために、お茶を淹れる際にどんな水を使えばよいか、何度くらいの温度でお茶を淹れればよいかを知っておくのが重要です。
水の質
一般的に、日本茶を淹れるのにはマグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分の少ない軟水が向いています。日本では、水道水がミネラル成分が少ないので最も適しています。ご自宅の水道水が美味しくない、あるいは硬水であるならミネラル成分の少ない水を購入されるのがお勧めです。
温度
お茶を淹れる際のお湯の温度は、カテキン、カフェイン、アミノ酸(テアニンやグルタミン酸)が茶葉からどれくらいバランスよく抽出されるかの鍵になります。お湯の温度が高ければ高いほど、カテキンやカフェインがたくさん抽出され、渋みや苦みの多いお茶になります。また、香りも強くなります。一方、低温抽出では、カテキンやカフェイン成分の抽出が少なく、苦味、渋みが抑えられ、よりうまみが出ます。
高級緑茶は、一番美味しく飲んでいただけますようそれぞれ心をこめて生産しております。ですから、常に緑茶をお求めいただいた際には最適の温度でお淹れください。下記のことをちょっと頭の隅においていただいておくだけで緑茶を淹れていただくときの温度の参考になります。
お茶を淹れる際のお湯の温度が高ければ高いほど、お茶は苦く渋くなります。お湯の温度が低ければ、うまみ、甘みが増します。
一般的な日本茶10種
一般的なお茶をランク順に示しました。最高級茶からほうじ茶までをご紹介いたします。
抹茶
抹茶を飲めば緑茶の栄養素をまるごと摂取することができます。玉露やかぶせ茶のように、抹茶のための茶園は、藁で覆われます。これは茶葉のうまみ成分がより強い苦味や渋みに変化しないようにするためです。抹茶用の茶葉は摘採され蒸気で熱処理され、その後、乾燥、選別され石臼挽きされます。抹茶は、淹れるというよりお湯で溶いて飲まれるので、かなりしっかりとした粘りがあります。
抹茶には、抗酸化物質が多く含まれており、豊かなうまみとあいまって新鮮な茶葉のさわやかな香りを楽しんでいただけます。
色: 鮮やかな緑色
香り: 新鮮な茶葉のさわやかな香り
味わい: 深いうまみのある豊かで奥行きのある味わい
あと口: 甘い
抽出温度: 80℃
お勧め品: 抹茶 大極
玉露
玉露は、緑茶の中でも最も高級なお茶です。玉露は、喉の渇きを潤すために飲むようなお茶ではありません。少量を楽しむお茶で、ワインのテイスティングに似ています。昆布のような香りと甘み、うまみをすすり、深く味わいます。この特別なお茶を楽しんで飲んでいただくためにお茶を淹れる温度はお守りただくことが大切です。
色:淡い、透明感のある黄色
香り: 「海苔」の香り
味わい: 濃厚なうまみと甘み
あと口: 昆布やほうれん草のようなあと口
抽出温度: 40℃
お勧め品: 宇治高級玉露
かぶせ茶
かぶせ茶は、約7~10日間茶の木を藁で覆う(かぶせる)ことからこの名前が付けられています。(玉露も同じ被覆栽培法をとりますが、茶園を藁で覆う期間がさらに長くなります。)かぶせ茶は、煎茶のような落ち着く香りと渋み、また玉露のようなうまみをもちあわせていることから煎茶と玉露のあいのこと言えます。
色: 黄緑
香り: 落ち着く香り
味わい: うまみのあるまろやかな味
あと口: 甘くすっきりさわやか
抽出温度: 60℃
お勧め品: 宇治かぶせ茶
煎茶
日本人がお茶と言えば、たいてい煎茶のことを指します。緑茶にあまりなじみがなければ、どこにでも売っており、またお値段的にも比較的手に入れやすいので、まず煎茶を選ぶのが手っ取り早いでしょう。
色: 透明感のある黄色、明るい黄緑
香り: さわやかで落ち着く香り
味わい: 渋みと甘みの絶妙なバランス
あと口: 余韻が残る味
抽出温度: 70℃
お勧め品: 高級煎茶やぶきた
深蒸し茶
煎茶と深蒸し茶の違いは、深蒸し茶のほうが煎茶より製造工程において茶葉を蒸す時間が2~3倍長いことです。こうすることによって苦味、渋みを抑え、芳醇な味わいになります。
色: 深緑
香り: 芳醇な香り
味わい: 煎茶に比べ渋みが少なく、マイルドで芳醇な味わい
あと口: あと味の残る芳醇な味わい
抽出温度: 70℃
お勧め品: 知覧特上深蒸し茶
茎茶(かりがね)
茎茶は緑茶の茶葉の茎の部分だけを使い作られます。口の中をすっきりさせたいときにはもってこいの緑茶です。茎しか使っていないからといって、上質なお茶ではないというわけではありません。日本国内には、最高級の茶園のみから摘採された茶葉を使って作る茎茶を専門にしている農家もあります。
色: うすい黄緑
香り: さわやかな落ち着く香り
味わい:さわやかな甘み
あと口: 少し苦味の残るまろやかなみずみずしいあと味
抽出温度: 80 ℃
お勧め品: 宇治かりがね
粉茶
ほとんどのお寿司屋さんでは、粉茶と呼ばれる緑茶が出されます。(お寿司屋さんでは、あがりとも呼ばれています。)粉茶は粉状であるからといって抹茶のような飲み方をするものではありません。淹れて飲むものです。粉茶の強い渋み、苦味が口の中をすっきりさせるので、お寿司を食べるときにはぴったりの緑茶です。
色: くすんだ深緑
香り: 深いお茶の香り
味わい: 苦み渋みのある味わい
あと口: 新鮮でスパイシーなあと味
抽出温度: 75℃
お勧め品: 玉露粉茶
釜炒り茶
釜炒り茶は、日本茶の中でも特に釜で蒸さないお茶ですが、緑茶とされています。釜炒り茶は、発酵を止めるために釜で蒸すのではなく、焙煎釜で炒ります。香りの強いお茶をお探しでしたら、深く炒った香りのする釜炒り茶をお勧めします。
色: 明るい薄黄色
香り: 釜炒りの深い香り
味わい: まろやかな味わい
あと口: ココアを思わせるようなローストアーモンドのようなあと口
抽出温度: 85℃
お勧め品: 嬉野釜炒り茶
玄米茶
玄米茶は、緑茶と炒った玄米を混ぜたお茶です。(緑茶と玄米を混ぜる割合は普通半々ですが、違った割合で混ぜる場合もあります。)日本のあられや煎餅がお好きでしたら、玄米茶も気に入っていただけるでしょう。
色: 薄い黄緑
香り: 炒った玄米の深い香り
味わい: さっぱりとした味わい
あと口: 香ばしいあと口
抽出温度: 85℃
お勧め品: 玄米茶
ほうじ茶
ほうじ茶は、ここで紹介する緑茶の中で唯一淹れたときのお茶の色が緑色にならないお茶です。これは、茶葉の水分が完全になくなるまで炒っているためお茶が茶色くなるのです。ほうじ茶にはほとんどカフェインやカテキンが含まれていません。そのため、胃にやさしくお子様やお年寄りも安心して飲んでいただけます。
色: 薄茶色
香り: 香ばしい香り
味わい: すっきりした味わい
あと口: 繊細な緑茶のあと口
抽出温度: 95℃
お勧め品: 有機ほうじ茶
皆さまに色、香り、味などのお好みにぴったり合ったのお茶をお選びいただけるようこの手引きをお役立ていただけると幸いです。SAZEN TEA では、他にも上質なお茶を各種取り揃えておりますので、いつでもお問い合わせください。